平成12年2月に特定調停法(正式名称は「特定債務の調整の促進のための特定調停に関する法律」)が施行されました。
特定調停は、裁判所において調停委員を介して債権者側と債務者が話し合いによって分割支払をする交渉です。 殆ど全ての貸金業者の利率は利息制限法を超過しています。そこで取引開始時からの取引を利息制限法に引直し、超過利息分を元金に充当します。高金利の消費者金融や信販会社との取引が長い場合は、大幅な残債務額の圧縮が見込めるわけです。その計算し直した債務額を、概ね約3年間(最長約5年)の長期分割和解を成立させる手続です。
特定調停では、訴訟とは異なり、債権者と債務者本人が直接同席せず、交互に調停室に呼ばれ、裁判所が任命した調停委員から事情を聞かれることになります。債権者と正面切て話し合わなくてもよいので気持ちの上で抑圧的になることはありません。
特定調停は、「任意整理」とよく似たところがありますが、弁護士や司法書士が介入しないのが特徴です。
原則、債権者の住所地の簡易裁判所へ申立てます。強制執行(差押などの恐れがある場合)停止させることも可能です。簡易裁判所では、手続きのための一定様式の用紙が用意されています。記入方法や手続きの進め方などレクチャーも親切にしてもらえることが多いようです。
借金総額が比較的少ない場合や、支払いは出来ているが、今後支払い不能になる可能性がある場合、弁護士や司法書士に任意整理を依頼できない方などが、自分自身で債務整理を行う場合に利用されるケースが多いようです。
特定調停の大きなメリットは、手続き費用が安いという点です。
調停申立てのために裁判所に収める費用(収入印紙の額と郵便切手)は1件あたり1000円前後です、一般訴訟のように郵送は特別送達によらないものなので、実質的に安くすむことになります。
弁護士や司法書士の費用が捻出できない場合には、有効な手続きとなり、申し立て手続きも弁護士や司法書士の手を借りる必要なのない場合が多くあります。簡易裁判所にて丁寧親切に教えて戴けます。
特定調停は、債務整理の一つの手続きではありますが、自己破産や個人再生手続きの代用になる手続きではありません。最近では万能な手続きであるかのような表現を用いるHPや書籍が存在しますが、あくまでも相手債権者の合意が必要であり、また強制力のある手続きではないことに注意が必要です。
債務額が高額で取引年数が短く、利息の引き直しが効果的ではない場合は、個人再生を検討する必要があります。また、現在の可処分所得やこれから変動するであろう収支を考慮し、自己破産が妥当なケースもあります。もちろん、調停成立後も破綻した場合にも、自己破産等手続きを行えますが後の債務整理に不都合を生じさせる可能性があります。
特定調停が成立すると、合意した内容が記載された「調停調書」(裁判所が作成した和解所)が作成されます。
この調停調書は確定判決と同等の効力を有するので債務名義(強制執行の出来る文書)となります。この調書に従って支払いを行なうことになります。しかし返済の延滞・滞納等をすると即座かつ容易に強制執行(差し押さえ)される場合もあるので注意が必要です。
また特定調停は、強制力がなく、あくまでも話し合いによる解決を求める手続きですので、不出頭やこちろの条件に応じない場合に不調に終わる場合もあります。その場合は「17条決定」(民事調停法17条による裁判所の決定)を積極的に出してもらいましょう。
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